韓国・ソウルにある梨花女子大学を訪れた。
ここには建築家ドミニク・ペローによって設計された大学内の複合施設がある。
メトロ梨大(イデ)駅から北へ徒歩5分ほど歩くと、緩やかな坂の先に大学の正門が現れる。
その先には小高い丘が広がり、伝統的な本館や大講堂が丘の上に並んでいる。
そして、ちょうどその丘の手前、谷のように地面を割るように姿を現すのが、
このペローの建築だ。
地形に沿って形成されたスロープは、地上から4層分ほど地下へと続いており、
その左右には建物が谷を挟むように計画されている。
谷の中心がメイン動線となり、両側の建物には吹き抜けや階段、ガラスファサードが配置されていて、
地下にも関わらず自然光が柔らかく差し込んでくる。
写真だけでは気づきにくかったが、スロープの最深部にある多目的ホールには
この谷から差すハイサイドライトが設けられており、空間の奥行きと明るさを巧みに演出している。
外と中がゆるやかに繋がり、地中にいながらも外とつながっている開放感を味わえた。
何より印象的だったのは、周辺環境へのリスペクトである。
建物は地上から姿を現すことなく、上部は緑化されていて、庭園のように美しく整備されている。
大学の象徴的建築である本館や講堂への視線を遮ることなく、
風景の連続性を壊すことなく、静かにその場に存在している。
GX(グリーントランスフォーメーション)やサステナブル建築が求められる現在において、
こうした「地形や視線への敬意」を感じる設計は、より価値を増しているように思う。
以前フランスで訪れた国立図書館でも同じ印象を持ったが、
ドミニク・ペローの建築は、単体として美しいだけでなく、
周辺環境や地形といった文脈とも、ダイナミックかつ丁寧に関係づけられている。